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東京高等裁判所 平成6年(行コ)217号 判決 1996年3月26日

東京都新宿区北新宿四丁目一七番一号

控訴人

東京山手青果株式会社

右代表者代表取締役

藤田幸広

右訴訟代理人弁護士

山田有宏

丸山俊子

松本修

伊東眞

東京都新宿区北新宿一丁目一九番三号

被控訴人

新宿税務署長 柴崎伸雄

右指定代理人

東亜由美

張替昭吉

中山良昭

羽柴宗一

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一申立

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が昭和六三年四月二八日付けでした控訴人の昭和六一年三月一日から昭和六二年二月二八日までの事業年度の法人税の更正及び過少申告加算税賦課決定のうち所得金額を一〇二三万七八五三円として計算した税額及び加算税額を超える部分を取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

本件控訴を棄却する。

第二当事者の主張

次のとおり訂正するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

原判決一三頁二行目の「この」から同五行目の「ある。」までを「広義の譲渡担保は、借入金返還債務が消滅せず残されたままとなる狭義の譲渡担保と受け取った金銭が売買代金とされ借入金返還債務として存続しない売渡担保とに分類される。売渡担保は、買戻の特約と再売買の予約とがあり、前者は、再度の売買が解除権の留保を意味し、買戻権の行使により所有権が遡って復帰し、後者は、停止条件付の売買であって、再売買により所有権が将来に向かって移転する。本件の場合、控訴人は、藤田の要請により、金三〇〇〇万円を貸し渡すにあたり、本件土地建物の所有権を取得し、かつ、再度藤田においてこれを同額の金額をもって買い受けることができる旨の約定をしたものであり、この貸し渡した金員については、貸付金債権として処理せず、売買代金として処理しているので、旧売買は、売渡担保とみることができ、売買契約書(甲第一号証の二)記載の約定の文言からは、再売買の予約に近いと解することができる。」と改める。

第三証拠

原審及び当審における記録中の証拠目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も控訴人の本件請求は理由がないと判断するものであり、その理由は、次のとおり付加・訂正するほかは、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決二四頁四行目の「川田欣一」の次に「、同船山榮」を、同三〇頁三行目の「同川田」の次に「、同船山」を、同三一頁一〇行目の「明確性」の前に「相違し」を各加え、同三四頁五行目の「一切なく、」から同七行目の「<1>」までを「一切ない上、<1> 右特約条項の」と改める。

2  同三六頁七行目の末尾に「そして、当審における証人船山榮の証言によっても右認定を左右するに足りない。」を、同八行目の「すれば、」の次に「旧売買によって本件土地建物は旧所有者藤田の支配を離れ、以降本件譲渡に至るまでの間、藤田が本件土地建物を自己の固定資産として経理してきたことはないから、」を各加える。

3  同四五頁七行目を次のとおり改める。

「はできない。すなわち、法人税法は、法人の役員に対する退職給与について、それが報酬の後払い的性格のほかに功労報酬的なもの、つまり賞与的性格をも併有する点に鑑み、損金経理により報酬の後払いであることを要件に退職金の損金控除性を認めている。したがって、役員退職給与の支給にあたり、法人の確定決算において損金経理を行わない経理方法によった場合には、法人自らが労務に対する対価でなく賞与的性格のものという認識を表示し損金性を否定したものとして、その役員退職給与を損金に算入することはできない。本件のように退職役員に退職慰労金の一部として現金に代えて土地を現物で支給し、その土地の時価より低い価額を退職給与として損金経理した場合において、控訴人が本件土地の時価の一部の金額を損金経理したという事実は、控訴人の意思表示としては、当該金額を限度として退任役員の労務の対価として認識したというにとどまり、本件土地の時価と退職給与として経理した金額の差額についての控訴人の意思表示はされていないというべきである。そして、役員退職給与の支給は、退職役員の功労に対する報償的なもの(賞与的性格)をも併有しているから、確定決算において損金の額に算入されていない土地の譲渡益相当額は、損金経理の要件を欠いており、その損金性を認めることはできない。」

二  結論

したがって、控訴人の本件請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がない。

よって、本件控訴を棄却し、控訴費用の負担について行訴法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡邊昭 裁判官 河野信夫 裁判官 小野剛)

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